HBCラジオ番組「中村美彦の一筆啓上」の2007年10月〜2008年7月放送分「シリーズ《温暖化》〜地球のあすを考えよう」を、当時番組プロデューサーの藤木俊三さんが冊子にまとめてくださり、2008年秋にリスナーや関係者の方々にお配りしました。今もなお地球温暖化を考える上で鳥の目・虫の目・魚の目となる内容ですので、この場で少しずつ紹介させていただきます。
(※本冊子の著作権はHBC北海道放送にあります。自己責任において引用しておりますので、お問合せはbxn05167@nifty.ne.jpまでお寄せください。)
2007年12月15日
『自然に対する感謝の心を忘れるな・・・』
萱野茂二風谷アイヌ資料館 館長 萱野 志朗 さん
仔熊の魂を神の国にお返しする儀式がイヨマンテ(熊送り)なんですね。こういうアイヌの伝統的な儀式を考えますと、やはりその動物に対する感謝、または物に対する感謝、そういうものが一番底に流れているような気がするんですね。ですからそういう感謝の気持ちがない、それを裏返して行くとどういうことになるかと言うと、人間が地球なり、自然なり何でもコントロールできると思った結果、なんでもかんでも好き勝手にしてしまうわけですね。森林を伐採したり、金儲けになれば公害を出したり…そういうことを含めいろいろな自然破壊が進んだ結果が地球温暖化で、まさに人間がやったことのつけだと思いますね・・・
(原文まま)
2007年12月8日
『大自然の中で内容のあるサミットを期待・・・』
元内閣総理大臣 中曽根 康弘 さん
来年のサミットの大きな主題はやはり環境問題、これは大きな問題でしょう。それは温暖化問題にもつながりますしね。そういうような面から北海道の非常に清澄な空気、大自然の中でサミットをやってそれを自覚させようと、自然に目覚めることを世界中の人にも与え、日本人にも与えよう、そういう意図が政府にあって洞爺湖が選ばれたと私は思うし、いい選択をしたと思います。それに値するだけのサミット、内容のあるサミットにしないといけない・・・
(原文まま)
2007年12月1日
『流氷には温暖化の影響が・・・』
日本気象協会 気象予報士 国田 博之 さん
流氷はもうすでに温暖化の影響が現れ始めているというふうに言われています。とくに観測記録をみてみますと、ここ百年間で4割ほど減ったといわれています。とくに今はオホーツク海側では流氷はよく見られますが、昔は太平洋側までよく流れ込んでいまして・・・。ここに明治の新聞があるんですが、たとえば釧路の例でいいますと、1892年、明治25年、この年の記事には「釧路は毎年流氷で釧路港が閉ざされるが、今年は接岸しなかったので珍しい」という記事が載っています。今の釧路は流氷が接岸すること全然なくて、たまに見えるだけですね・・・
(原文まま)
2007年11月24日
『農業の現場でも温暖化を実感させる状況が・・・』
JAところ 代表理事組合長 小野寺 俊幸 さん
温暖化の実感として、春先から局地的に大雨が降るようになったり、あるいは竜巻が発生したり、秋の温度がなかなか下がらなくて、馬鈴薯やビートの糖度が上がらないという状況が発生しています。馬鈴薯であれば局地的に大雨が降ってイモが大きくならないとか、ホコホコした男爵芋がですね、高温によって・・・、昼夜の温度差が大きければ大きいほど北海道の馬鈴薯はおいしくなるんですが、イモをおいしくする、その昼夜の温度があまり変化がなくなってきているというのが実態としてあります。ここ4年くらい前からその傾向が大きくなってきました・・・
(原文まま)
2007年11月17日
『北海道の近海でも意外な魚が・・・』
札幌プリンスホテル「寿司若竹」調理長 長面川 裕之 さん
今まであまり北海道では獲れないと思われていた魚が時々あがったり、大量に獲れたりとかいろいろ変わった状況があります。例えば本州でしか獲れないと思われていたアジが日本海の寿都沖でよく獲れるようになっています。これはここ2〜3年くらいで目立ってきた感じがします。また、ブリなんかも北海道ではそんなに獲れなかったはずなんですが、これもよく獲れるようになりましたね・・・
(原文まま)
2007年11月10日
『洞爺湖サミットは北海道らしく・・・』
民主党幹事長 衆議院議員 鳩山 由紀夫 さん
私は北海道でサミットが開かれることに対して非常に大きな意義を感じています。環境が一番日本の中で豊かな、しかも美しい洞爺湖でサミットが開かれると・・・私はそこで再生可能エネルギーの比率を10%に上げるという思いを現実に洞爺湖の周辺で示すことが大事だと思います。たとえば水素自動車を走らせて、やっぱりこれからはCO2ではなく水素だと、水素の社会を作ろうじゃないかということを洞爺湖あたり全体で見せていけば、世界の人たちがこれはすごいなという気持ちになると思うんですよ。まぁそのためにはいろいろ法律を変えなきゃいけないということもあるんですが、そういうことを見せることが非常に大事だと思いますし、まさに北海道らしいサミットにしていくことが大事だと思います・・・
(原文まま)
2007年11月3日
『フランスの環境革命とは・・・』
パリ在住ジャーナリスト 高橋 真美 さん
これまではフランス人の環境意識は低くて、特にパリは犬のフンが一日で16トンも収集されるし、ゴミは道路に捨てるし、分別は全然徹底していないし、環境というとみんな後ろを向いてしまうという意識だったんですが、ここに来てがらっと変わったんですよ。まず、サルコジ大統領が環境でフランスがモデルになろうと声を上げ、フランスで環境革命を起こすと言い出したんです。そうしたら各自治体が急にスピードアップして、市民も関心を持ち始め、いろいろな対策が組まれるようになりました。例えば急に出てきたのが「パリ市は環境にやさしい11か条を推進しよう」と言って、通勤は徒歩・自転車または公共交通機関を使いましょうとか、部屋に温度計を置いて19度以下になったら暖房をつけましょうとか・・・。あと、最初の30分が無料のレンタル自転車が市内あちこちにあるんですよ・・・
(原文まま)
2007年10月27日
『中国の環境問題の現状と課題』
JNN-HBC北京支局 油谷 弘洋 記者
大気と水の汚染が最も深刻で、大気汚染については、この北京も連日、光化学スモッグに見舞われ、目がチカチカする日が結構あります。また水の汚染はとくに農村部で問題となっています。化学工場が垂れ流す工業排水が問題です。中国の安徽省という内陸部のある村では、がんや難病を発症する人が異常に多い地域があって、調べてみたら、村で操業する化学工場が汚水をまったく処理せずに垂れ流していたことが判明しました。いわば単純な公害がいまだに各地で頻発している状態です。・・・中国政府の環境対策についてのスローな姿勢は、温暖化対策にも象徴されているように思います。中国はこれまで、”我々は開発途上国なので温暖化対策の論議には加わらない”というスタンスでした。しかし今年のハイリンゲン・サミットでは、「2050年までに世界の温室効果ガスを半減させるべく検討する」ということが決まりました。その後も中国は「協力を強化したい」としつつも、「経済の発展段階に応じて責任を区別すべき」としています。つまり、「経済発展に影響するような規定は到底受け入れられない」と明確に表明しているわけです・・・
(原文まま)
2007年10月20日
『ふるさとの水の旨さに気づく・・・』
講談師 神田 山陽 さん
久しぶりにふるさとに帰って来て、水の旨さというか、自分の産湯の有難さみたいなものに、はたと気が付いたんです。1年間イタリアにおりまして、そこで暮らしている間にもずいぶん感じましたが、地元の人間が地元の水の旨さを誇るという、それが食べ物につながって行き、今言われている地産地消みたいなものの源は水の旨さではないかなと思ったんです。水の旨さというのは総合環境に成り立っているものですから、一朝一夕では出来得ないものなんですよ。ただ、あちこちから水を買ってきている東京の暮らしに比べると、いかに豊かかということをそこに住んでいる人間が自覚しているかと、それがあまり自覚がないんです。当たり前にあるということで・・・。ちょうど海の中の魚が水を意識しないように、私たちが空気を余り意識しないで吸うように・・・
(原文まま)
2007年10月13日
『温暖化、外来種問題のパネル展も続けています・・・』
旭山動物園 園長 小菅 正夫 さん
今、野生動物にとって非常に大きな問題は地球温暖化と地域の動物については外来種の問題です。旭山動物園はここ6年くらい、徹底的にその2つをやることで、春先から夏休みまでは地球温暖化展をやって、夏から冬にかけては外来種にテーマを絞ってずっとパネル展をやっています。また、パネル展ばかりではなく、特設ガイドとして職員が外来種の影響を蒙っているエゾタヌキなどのところをツアーで回ったり、地球温暖化問題ではホッキョクグマやペンギンの特別ツアーをやったりしています。それと「もぐもぐタイム」のときは必ず環境問題について話をしています・・・
(原文まま)
2007年10月6日
『温暖化はまったなし・・・議論より具体策を・・・』
前斜里町長 午来 昌 さん
温暖化問題について地球市民の一人として何が出来るのかということを、北海道庁あたりが、きちっと道民に訴えなくてはだめだと思う。道民ひとり一人ができることはいっぱいあるはずなんですよ・・・。知床の自然に関しても研究グループが出来て、海域の問題、エゾシカの問題、ヒグマの問題などについて専門家のワーキンググループがあるんですが、議論ばっかりで、さっぱり具体性に欠けているから、もう議論はいいから、早く自主計画をたてなさいという注文を機会あるごとに言っているんですが、それがなかなか目に見えてこないですね・・・
(原文まま)

HBCラジオ「中村美彦の一筆啓上」
シリーズ《温暖化》〜地球のあすを考えよう〜 の冊子について
発行年月日 2008年9月15日
編集・発行 北海道放送 報道情報局(非売品)
“今年7月に開催された「北海道洞爺湖サミット」では地球温暖化問題が重要議題として話し合われました。その成果については評価が分かれるところですが、今回のサミットを契機に、環境や温暖化問題に対する一般市民の関心が一気に高まったことは確かです。私たちの番組でも、去年の秋からこの洞爺湖サミットの開催を向けて温暖化問題をさまざまな角度から考えてみようと、シリーズ《温暖化》〜地球のあすを考えよう〜をスタートさせました。そして、去年10月6日から今年7月12日までほぼ毎週、40回にわたって放送しました。中曽根元総理や田原総一朗氏をはじめ、毎回、政治家、ジャーナリスト、学者・研究者など39人の多彩なゲストに登場して頂き、それぞれの立場、視点から環境や地球温暖化に関する貴重なお話を伺うことができました。せっかくの貴重なお話ですので、出演いただいた方々のご了承を頂き、放送されたお話のエッセンスを文章化して、このような冊子にまとめました。また、巻頭にはサミットの議長をつとめました福田総理大臣からもコメントを頂戴いたしました。地球温暖化問題を考える上で、是非参考にして頂ければ幸いです。なお、文章化するにあたり、判り易くするため、原意を損なわない程度に、私の責任で言葉を補わせて頂きました。ご了承下さい。また肩書きは番組出演当時のままとさせて頂きました。 番組プロデューサー 藤木俊三”
(原文まま)
(※本冊子の著作権はHBC北海道放送にあります。自己責任において引用しておりますのでお問合せはbxn05167@nifty.ne.jpまでお寄せください。)